日本人の衛生観念

長らく日本人はきれい好きだと言われていました。

「街にはゴミ一つ落ちていない。駅も商店も公共のトイレも清潔である。銀座の通りは世界で一番きれいだ。」

まあ引き合いに出される海外の街並みは、ニューヨーク市の53番街みたいな薄暗いゴミが舞うようなところばかりですから、比較する対象が間違っていることもありましたが、概ね日本人はきれい好きという事で、内外ともに共通認識だったような気がします。

日本人のきれい好きと言えば思い出すのが、ビールやコーラなどのアルミ缶のプルトップからステイオンに変わったときです。

それまでは日本のアルミ缶には、引っ張って取れるプルトップ式が使われており、小さいものですからそこら辺に投げ捨てる人が多く、公園の砂場や海水浴場で足を切る人が多かったのです。

そこで、海外ですでに普及していた、缶を開けた後もめり込んだ形で残るステイオン式に変更されたのですが、その際に、缶に外部にあった缶の一部が飲み物に接する缶の内部にめり込むのは、日本人の衛生観念からして普及しないという意見が多かったのです。

しかし、(文字通り)蓋を開けてみると、特に大きな問題にもならず、ステイオンがそのまま受け入れられたのです。

今から思えば、缶の一部がめり込むより、平気で缶の外部にベチャッと唇を付けて飲んでいたのですから、日本人の衛生観念は不思議です。

ところで、今話題になっている回転寿司を始めとする衛生マナーの問題ですが、若い人の中には、本格的な寿司屋で人の手で握った寿司は気持ちが悪くて食べられないという考えがあるそうです。

ですから、そのような人たちにとっては、回転寿司は高級寿司店より衛生的だったわけですが、今回の騒動でそれも疑わしくなっています。

そういえば、昔から高校の授業の雑談で「寿司屋のおやじがトイレでちゃんと手を洗っているか怪しいぞ!」という話がありました。

これは個人的な見解ですが、モールやデパートのトイレで男性のうち3分に1ぐらいは、手を洗わずにそのまま出ていきます。(ものの大小は問わず)

寿司屋のおやじ(おやじがやっている寿司屋が今もあるか疑問ですが)が、必ず残りの3分の2に入っていればいいですが、、、

よく中国人はレストランに入ると、まず箸やナイフやフォークを紙ナプキンでゴシゴシ拭っています。アメリカに長く住んでいた中国系の人も、熱心に拭いていました。

これから日本人も回転寿司に入ったら、湯呑や醤油をアルコールティッシューで拭きまくるようになるのでしょうか?

相次ぐ不衛生迷惑行為

回転寿司チェーンで様々な不衛生な行為が拡散されたかと思えば、今度はうどんのチェーン店で備え付けの天かすに同様の不衛生な行為を行なったというニュースです。

日本のシステムは性善説が前提ですから、無防備であることが多いです。

アメリカなどはそこら中にタダで飯を食おうとする人(かゾンビか判らない)がたくさんいますから、無防備だと餌食になってしまいます。

テーブルの上に無料の添え物、生姜やネギや醤油など、が置かれた店は牛丼屋やラーメン屋にも多いですから、日本中の飲食店が被害の対象になる可能性があります。

昭和の時代に、毎朝各家庭の前の牛乳箱に届けられる牛乳は、まだ朝の人気の少ない時間に配達されていましたから無防備でしたが、これが盗まれてニュースになることは聞いたことがありませんでした。(ニュースにならないほど頻繁に盗まれていたかもしれないが、、、)

その当時聞いた話では、簡単に盗まれるところに置かれた牛乳を盗むと、世間の常識としての安全性が失われるので罪が重いと言われていました。

つまり、無防備でも安全だと思っていたものがそうでなくなると、安全を保つためのコストがかかってしまうので、社会的損失が大きいということでしょう。

一方で私が新卒で入社したとき、大阪駅近くの串カツ屋で先輩に言われたのは、「このソースの中に何かが入っていると思ったらあかんで、そんな事が気になりだしたら安心して食ってられへんからな!」ということでした。

まあいわゆる屋台のようなところで食べるのに、そんなに衛生面を気にしたらいかんということでしょう。

しかし当時は、最近見かける「ソースの2度付け禁止!」という注意書きはありませんでした。お客のマナーに対する意識が今より高かったのでしょうか。(そんなことはないように思うが、、、)

店の最低限のマナーは客が自主的に守った。なぜなら、守らないと二度とその店に立ち入れなくなるから。

それに比べると、最近のニュースでの不衛生さは無粋の極みです。

今回の騒動で外食産業が一斉に安全策を講じると、無料の添え物がなくなったり、無駄な安全装置で使い勝手が悪くなたりとあまり良いことはなさそうです。

メールやコンピューターシステムのハッキングやマルウェアなどのように、常にいたちごっこで安全対策を講じ続ける必要がありそうです。