企業が売却される局面でストは有効か?

今回の結論からいけば、有効ではなかったようです。

ストは駆け引きですから、相手が駆け引きに乗れる状況なら有利に活かすことができるかもしれませんが、相手がもっと危機的な状態の場合、ストによって状況が変わるものではないのでしょう。

経営者側にいわゆる嫌がらせ的なインパクトしか与えられませんから、すでに経営が正常にできない経営者はストにかまっている場合ではありません。労働者的にはストに参加するふりをして、転職活動に励むのが正解だと思われます。

ストは売上が減るわけですから、経営は継続できるけれども従業員の給与は減らしたいという、経営者の戦略に対抗する手段として、まだ経済が成長過程では労働者の常套手段として有効だったのでしょう。企業が身売りする段階で有効だとは思われません。

おそらく地元客に従業員の悲惨な状況を伝える効果はあったと思いますが、地元客にとっても、同じ場所に別の経営者になった新しい商業施設ができるのなら、現在の従業員が継続雇用されるかどうかはどうでも良いことで、よほど人気があった店員なら継続してもらいたいこともあるかもしれませんが、普通ならどうでも良いことです。

昭和40年、50年代ならいざしらず、令和の時代に潰れつつある企業に継続雇用を保証しろと要求しても、土台無理です。

ということで、縮小傾向にある今の日本においてストが有効になるケースなど殆どなく、「嫌なら騒がずにやめる」というのが正しい行動指針のような気がします。

飽きられる観光資源

中国からの団体旅行が解禁されて、インバウンドが最盛期と同じぐらい増えることが一部の業界では期待されていますが、一方でオーバーツーリズムによる生活への影響が心配されています。

オーバーツーリズムは、観光客で儲かる人とただ単に迷惑を被る人が別だから問題になるわけで、儲かっていれば多少の不自由は我慢できるでしょうし、何のメリットもない人はただ生活が不便になるだけでおもしろいことは何もありません。

だいぶ昔のことになりますが、海外から京都に来ていた御婦人に、京都には寺と神社以外に見るものはないのかと聞かれたことがありました。

どこに行っても同じような寺と神社ばかりで、まともな博物館や美術館、動物園などがないことを憂いていました。

そもそも京都の神社仏閣は、観光客のために作られたわけではありませんから、その配置や観光としての利便性が考えられていません。

ディズニーランドのように、初めから人の流れや所要時間、待ち行列の施し方など、設計して作り込まれたものとは違いますから、海外から来て観光するのには、興味を持って効率よく回ることを工夫しなければ、疲れるばかりで退屈な旅行になる可能性があります。

ところで、最近は東京や京都などの都会ではなく、地方都市や自然の風景を楽しもうとする海外旅行客が増えているそうです。

それだけ日本の観光資源が豊富であると捉えることもできますが、逆に都会の観光資源はすでに飽きられている可能性もあります。

旅行が異文化や未経験なことに触れるのが目的だとしたら、日本の都会の景色はそれほど世界の他の都市と変わるものでもなく、日本の伝統が息づく地方の方が異文化を感じやすいのかもしれません。

京都の寺や神社も、海外にもっと深く理解してもらえるよう文化や伝統を深く印象づけるような志向を凝らさなければ、海外旅行の興味の対象として選ばれなくなる可能性があるでしょう。

インバウンドで経済が潤うのを喜ぶだけでなく、日本の観光資源を磨き続ける努力が必要なのかもしれません。

在宅勤務は定着しなかった?

マイナビニュースに、コロナ禍で定着したかのように見えたテレワークが、最近の調査では22.2%まで減少してしまい、コロナ禍以前のレベルに近づいて来たというニュースが掲載されています。

様々な勤務形態の3万人以上のコロナ禍前後のテレワーク率を比較したそうです。

外出の制限からテレワークが始まった2020年3月は13.2%のテレワーク率で、2020年4月以降25%を下回らなかったが、2023年7月は22.2%に下がったということです。

下がったと言っても22.2%とコロナ禍以前に比べると高いですが、今後徐々に下がっていくことが予想されます。

従業員規模で分けた統計も出ていましたが、大企業が40%前後の実施率であっても、小規模の企業の場合は再考でも15%程度とかなりの隔たりがあります。

またテレワークの実施とは何を指しているかというのも曖昧で、どこまでこのアンケートの結果が正しいのか分かりませんが、電車に乗っている感覚からするとそれなりに正しい雰囲気はあります。

全業務時間の5分の1がテレワークで行われていると解釈すると、かなり利用されていると考えられます。

業務の寄って在宅勤務で問題がなかったり、かえって効率が上がるものもあるでしょうが、共同作業が多い場合やコミュニケーションや討論が主体の業務なら、テレワークが向いていないことがはっきりしたのかもしれません。

企業の中には慌てて本社の規模を半分にしたところや、従業員でも郊外にマンションを購入したりした人もいて、社会が大きく変わる期待もありましたが、それほど極端な社会変化は起こらなかったということでしょうか?

本当は。テレワークが拡大した機会に社内手続きの簡略化や印鑑の廃止などを行えば、コロナ禍によって経費削減や業務の効率化が同時に行えたのでしょう。

そのような「災い転じて福となす」ことを実践できた企業はどれぐらいあるでしょうか?

医療記録の閲覧とマイナカード

マイナカードに記憶された過去の医療記録を、どこまで医療関係者に見られるか?

皆さん、マイナカードにどんな情報が記録されていて、どこまで他人に見られるか理解しているでしょうか?

残念ながら私は知りません。公開されているマイナカードの規格から、どのような情報がどれだけの期間残っていて、誰がどのようにして閲覧できるのか、まったく理解しておりません。

政府は、マイナカードのスペックと運用方法を、国民に分かりやすい方法で公開していますか?

改正個人情報保護法の施行によって、これまで以上に個人情報の利用と管理に制限がかかっています。

個人情報保護法は、国際的な流れに日本が遅れを取らないように海外の法規を真似しているように思われ、国内の議論だけを見ていても個人情報の守らなければならない範囲を理解することはできません。

特に生命科学分野における個人情報には、利用に制限がかかっていますから、容易に読み出すことはできないようにするべきです。

ところが、朝日新聞デジタルのニュースによりますと、本人の同意があればすべての情報をマイナカードから読み出すことが、現行の仕組みではできてしまうと指摘されています。

そもそも医療情報は、レントゲン写真にしてもCTスキャンのデータにしても、他の医療機関で作成したものあまり利用されることはなく、当該の医療機関で再度やり直すことが多いように思います。

検査装置の稼働率を高めるためなのか、2重に検査費用がかかるため検査データの持ち出しを推奨しているのは健康保険組合だけで、実際は医療機関は収入が増える方法を選びます。

ですから、マイナカードにいくら貴重な過去の医療情報が蓄えられていたとしても、有効に利用されることはほとんどないでしょう。

しかも、現在の治療にまったく関係がない情報が大量にマイナカードに蓄えられているとしたら、個人情報の保護の観点からも重大な欠陥を持った制度だと言えるでしょう。

マイナカードは、日本のデジタル化が世界に追いついていないという理由だけで、まったく素人の政治家が性急に事を進めて、まったく役に立たないシステムをでっちあげようとしています。

日本には、すでにまともなシステムを構築する事ができる人材が、消え失せてしまったのでしょうか?

マイナカードにどのような情報を管理されているかも知らずに、ポイントにつられてせっせとマイナカードを取得する国民のバカさ加減も尋常ではありませんが、政府の対応もそれに合わせたかのようにお粗末です。

マイナカードの不手際でごたごたし続ける状況を見ていると、数年後にデジタル化でさらに世界から引き離された日本の姿を想像するのは難くないでしょう。

出生率と社会負担率

少子化が社会問題となって久しいですが、その間原因についていろいろ検討されてきました。

女性の高学歴化による社会進出で結婚年齢が上がり成婚率が下がったためだとか、正規雇用者が減ったとか、子どもが生まれても保育施設が足りないために安心して子どもを産めないとか。

確かにそれぞれ関連はありそうで、それらを解決すれば少子化の対策になりそうな気はしますが、どうも少し違うような気もします。

東洋経済オンラインの記事で、社会負担率の上昇が一番根本的な原因ではないかと問いかけています。

見た目の給与が上がっても、社会負担がそれ以上に増えれば実質可処分所得は少なくなりますし、正規雇用だからといって社会保険料が天引きされ、必ずしも十分な給与を得ているとは限らないようです。

特に最近は共稼ぎが標準になってきており、2人の稼ぎを合わせて生活できればよいという風潮になっています。

先日、マンション価格が2人分のローンを借りることを前提に価格を決めているのではないかと書きましたが、子どもを養う以前に生活自体がギリギリになってきています。

ところで、一般的に社会生活を改善するためには、生産性を上げることを目指します。生産現場は言うまでもなく、管理部門でも生産性の向上は企業では必須です。

しかし、政府や地方自治体ではどうでしょうか?

デジタル化を進めると豪語してみたものの、マイナンバーカードでの非効率な作業はどう見ても生産性が上がっているとは思えず、マイナンバーカードが便利になると宣伝はしたものの、マイナポイントで国民を釣るしか普及の方法がないというのは、便利になるということがまやかしでしかないことを物語っています。

おそらく感覚では、政府と地方自治体の業務の8割方は削減できるのではないでしょうか?

社会負担率が5割に迫り、「サラリーマン一揆」が起こっても不思議ではないレベルに達しようとしている現在、社会負担率を5割から4割、いや3割に抑えるための生産性の改善を、政府が約束する必要があるのではないでしょうか?

まずは、政府と地方自治体の生産性を計る尺度を設けるところから始めてはいかがでしょうか?