人材の流動性

自民党の総裁選では、これまで中途半端な議論だけで結論が出ないままになってきた案件を引っ張り出して、さもそれを一気に解決することを公約のようにのたまう候補者がいます。

人材の流動化もその一つで、会社に使えない人材が滞留するのは人材の流動化が進んでいないためだというのです。

経営者というのは身勝手なもので、近年人材を育成するより、中途採用やアルバイトで必要なスキルを持った人を集めることに疑問を持たなくなっています。

ですから、他社と差別化することができず、どんぐりの背比べにならざるを得ず、将来的に経営がすぼんでしまうのです。

人材の流動性と政治家が言うときは必ず経営者の顔を見ながら言っているので、いかに迅速に不要な人材を首にできるかを競い合うのです。

それでは「人材の流動化」ではなく「使い捨て化」に過ぎません。(せめてリサイクルはしてくれ!)

ところで最近企業では、パワハラやカスハラ、セクハラにアカハラなどのハラスメント禁止教育が盛んです。政治や行政の分野ではどれぐらい熱心にハラスメント禁止教育をされているのでしょうか?

おそらく全く進んでいないと思われ、そのことが人材の流動性を簡単に宣伝文句として採用してしまう軽率な行動に表れているのだと思います。

総裁候補者が唱える公約はどれもが地雷のようなものです。

「それは言っちゃいかんだろう」みたいな標語のオンパレードですから、この先も日本は暗澹とした日々が続くのでしょう。

国民としては、少しでもマシな候補者が選ばれることを望むだけです。

年末調整を廃止

自民党総裁選で選挙戦の目玉にしようとするのか、これまで取り上げられてきた事案が掘り起こされることがあります。

今回ならば、健康保健証のマイナカードとの一体化や年末調整の廃止などでしょうか? どちらも以前から一筋縄ではいかない賛否両論があるいわく付きの案件です。

古いテーマならいちいち説明しなくても事の重大さは共有されていますから、これを何とかしますと言い切ればそれに対する期待感で優位に立てるということなのでしょう。本当にその問題を解決することが目的でなく票稼に過ぎません。

年末調整は、通常の給与所得から控除されるべきものを年末に領収書を集めて会社に任せれば、12月の所得税の額を調整することによって控除を済ませることができる、従業員にとっては楽であるものの当たり前のように思っている人がほとんどでしょう。

80年代にパソコンが普及し始めた頃、アメリカでは確定申告を全員がするからパソコンが欠かせないが、日本は年末調整があるのでパソコンの必要生が低いなどと言われたことがありました。

日本では銀行の金利に最初から20%の税金が取られてしまっていて、その後確定申告をしても返ってきません。年末調整をなくすのならば、利子に対する総合課税と分離課税に関しても手を入れなければならないでしょう。銀行・証券システムの大きな変更を伴います。

その後、インターネットとスマホが普及して日本でも確定申告はスマホで簡単におこなえるようになりましたが、その前に保険料控除や住宅融資控除など、そもそも時代に合わなくなった控除制度も多くなったように思います。

年末調整も、本来政府や自治体が計算するべきところを企業の総務にやらせているのですから、それ自体があるべき姿であったか怪しいところです。

取って付けた思いつきで過去の問題を話題に持ち上げるだけではなく、政府や自治体の業務体系に基づいた改革をお願いしたいものです。