エビデンスとポシビリティ

よく医学の分野でエビデンスがあるとかないとかが話題になることがあります。

たくさんのサンプルの結果を集めて、統計的に処理を行って科学的根拠があると判断するわけです。

しかし一方、昔から「可能性が否定できない」という曖昧な表現も使われ続けています。

で、大概はエビデンスがあると言われればそちらを信用したくなるわけですが、ではエビデンスがあるしっかりした根拠があるものと、可能性があるという根拠のないもののどちらが信用できるでしょうか?

そもそも、誰もが認めることなら議論するまでもなく自明ですから、エビデンスが必要になる時点で確実な結論などないことが分かります。すなわち可能性の範疇の話になってしまうわけです。

例えばある薬品の効用が、研究によって90%の人に効果が立証されたとしても、その薬を飲む本人が90%に該当するのか10%に該当するのかはやってみないと判らないわけで、結果として効かなかったとしたら「私は10%の方だったんだ!」と納得するしかありません。

結果が不成功だった後は、エビデンスがあろうがなかろうが自分の結果が全てであり、予想がいかに高い確率をエビデンスが証明していても、結果を覆すことはできません。

ですからエビデンスは学術的に可能性を保障するだけで、判断する上での参考にはなっても実施した結果にはなんの効力もないのです。

このことは当たり前ではありますが、エビデンスは研究としての単なる作法の一つに過ぎないということになります。

学術論文なら作法として必要だとしても、日常の業務や生活で「エビデンスがないからだ駄目だ!」などという輩には、まず「エビデンスがあっても可能性は変わらない。まずやってから結果で判断しよう!」と言いたいものです。