AIと老人

昔(と言っても40年ほど前)、時のミノルたカメラがオートフォーカスを発表したとき、写真を趣味にしていた老人たちが歓喜の声を挙げました。

「これでピントが合わせられる!」

当時の一眼レフは、ピントを合わせるためにマイクロプリズムやスプリットイメージの像を、目を凝らしながら見て調整する必要がありました。

またライカのような2重像合致式のレンジファインダーカメラでも、うっすら見える像を一致させる必要があり、視力が弱った人には苦痛な作業だったのです。

それまでにも自動焦点はコンパクトカメラで実現していましたが、本格的な一眼レフでオートフォーカスが開発されたことは、写真が趣味の人だけでなくベテラン(年配)プロカメラマンにとっても画期的だったのです。

さて、昨今の年金問題の解決方法の一つとして、「定年を過ぎてもできるだけ長く働こう」ということが推奨されていますが、その年金財源枯渇対策のやり方の是非はともかく、年ととっても働ける仕事が本当にあるのかという問題があります。

仕事というからには世間(社会)の役に立つことでなければなりませんが、頭がボヤボヤした老人に人のためになる仕事ができるのかという根本的な疑問があります。

だからこれまでは定年制度があって、「それ以上働いても社会の害になるよ」という年齢制限があったわけで、どこそこで見る老害を防ぐためにも必要だったわけです。

しかし、ここに来て年金制度が破綻しかかっているために、老人がボケている場合ではなくしっかりしなければならない自体になってきているのですが、好んでボケになったのではありませんから、何らかの科学技術によってこれをサポートする必要があるわけです。

そこでAIの登場です。

人類が昔の人のような体力を持たなくてもやっていけるのは、蒸気機関から始まる人口動力のおかげです。

ですから同様に、あらゆる頭が弱くなった人や元より弱い人の助けにAIがなるのです。

そう考えると、AIによって職を奪われることを心配するより、AIによって職を得られる人も多いことを機会の創出と考え、新しい社会体制を考えるべき時期が来たと考えるべきだと思います。

年金問題は、若い人の働く意欲にも影響していると聞きます。

AIによる老人の就業拡大は、あらゆる世代の意識を変えるかも知れません。

日本独自の商社が救世主になる

海外であまり商社なるものを聞いたことがありません。日本では大学の新卒就職先で人気の商社は、海外にはそもそも存在さえしない。

これは異常事態です。

いや、別に良い悪いのはなしではありません。ただ異常だということ。

商社が日本にしかないということは、日本の弱みになる可能性がある代わりに、日本の強みにもなり得ます。

日本は生産性が低いと言われ続けていて、世界の平均に比べて給与所得が低く、その理由に海外諸国に比べて大企業が少なく中小企業が多いと言われています。

大企業に比べて中小企業が所得が低く、中小企業の生産性が低いと言われていますが、本当でしょうか?

大企業は本当に生産性というべき生産をしていますか? 

大企業は、単なる購買部門になってしまっていませんか? あるいは、悪名高い電通のように、発注金額を中抜して下請けに流すだけの、ベニスの商人のようなことをしていませんか?

アトキンス氏が日本の生産性が低いのは、中小企業が多いからだと断言されていますが、その通りです。本当に生産して価値を生み出している中小企業に対して、大企業が生産もせずに下請けに生産を任せて中抜きをしているから、大企業の生産性が高いように見えているだけなのです。

そこで提案です。

中小企業は規模が小さい故に、案件を直接発注者からもぎ取ってくるような営業活動が行えず(強力な営業人材がいない)、大企業の下請けに甘んじるしかありません。

しかし、日本は世界に誇る商社がたくさんあるわけですから、商社が中小企業に直接発注するようにすれば、高給取りだが生産をしない大企業を回避することができます。

中小企業にとっては、営業人材を賄う必要がなく、後は商社が本気を出して日本の生産性を高める気概を出すだけです。

そんな簡単な話はないだろうとは思いますが、中間マージンを省くことは余分な経費を省く鉄則であることは小学生でも知っています。

日本の生産性が低いのは、生産しない(付加価値を生み出さない)企業が中抜きをしているからに他なりません。

ぜひ日本の誇る商社が、これまでのような大企業の海外購買の仲買だけでなく、中小企業の下請け地獄からの脱出や海外展開の手助けに、新たなビジネスチャンスを見出してもらいたいものです。